WBCテレビ観戦記

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WBCの決勝は、日本の勝利で幕を閉じた。今回のWBCで感じたことをリーダシップという観点から私なりに書いてみたい。

 

まず、栗山監督、61歳。非常に柔和で、その指導法は昭和時代のリーダーと一線を画す。

 

選手と一緒になって考え、励まし、信じ抜くという姿勢。これは今までに無かったスポーツ指導者である。昭和の時代は、実績のある指導者に遮二無二ついて行き、とにかく体を使い徹底的にしごかれた。

 

勿論、これはこれでひとつの指導法かも知れないが、自分で考え抜いて、計画的に自分を作り上げる現在のものとは違っていた。

 

野球はアメリカ由来のスポーツである。大リーガーたちは高年俸を貰うスーパースター。実力もとんでもない集団であることは明白。かれらに憧れを持つのは日本のプロ集団でも当たり前であった。

 

今回、大谷が決勝前に「大リーガーに憧れをもつのは、今日は止めよう」と言った言葉が印象的だ。頭をよぎるのは、外人コンプレックス。かつては「体の大きい外人に敵うわけがない」ともっともらしく説明されていた。でも今の若い人は精神的にも、肉体的にも、この限界論を跳ね返す。大谷のパワーがそれを証明している。

 

もうひとつ興味深かったのが、栗山監督が必ずしも実践リーダーを明確にしなかったことだ。自然発生的に、まずダルビッシュが動き、投手陣に勇気を与えた。そして、バッティングでは大谷が大リーガートップの実力を練習で披露した。大谷バッティングの凄さに、日本のトップ選手も舌を巻いた。こうして、自然発生的にリーダーが現れ、きちんと役割を果たして行った。

 

日本の強さはこれに加えて、ヌートバーの存在が大きい。父がアメリカ人、母が日本人と完全にハイブリットスタイルなのだ。元々の体の強さはアメリカ人の父から。明るさ、辛抱強さは日本人の母譲り。これが実に上手く機能した。日本では、必死のプレーに日本人が感動した。よほど日本人より日本人らしく、そして底抜けに明るくチームのためにプレーし続けた。

 

もはやアメリカ人だから、日本人だから、大リーガーだから、日本野球だから、ということを超越した、実に爽やかなダイバーシティの実現を感じるWBC優勝だった。

 

 

課題解決コンサルタントⓇ 阿比留眞二